≪内視鏡的大腸粘膜下層剥離術≫について

内視鏡的大腸粘膜下層剥離術(大腸ESD)とは?

大腸腫瘍(早期がんおよび腺腫)を内視鏡切除する従来からの方法として、内視鏡的粘膜切除術(EMR)がありますが、大きな病変、遺残再発後の病変、線維化を伴う病変はEMRによる切除が困難です。EMRでは2cmを越えると半数が、3cmを越えると殆ど分割切除となります。分割切除はEMRを繰り返し行うことで複数に分けて切除する方法ですが、精密な病理診断が困難となることから治癒の判定が難しくなります。病変の存在部位や技術的な問題からEMRが困難と判断された場合や分割切除後に遺残再発した場合は、内視鏡切除で根治できる病変であっても外科手術が必要になります。 これに対し、内視鏡的大腸粘膜下層剥離術(大腸ESD)は、大腸粘膜表面からある程度の深さにとどまっている早期がんや、その他の腫瘍性病変に対して行われる内視鏡治療技術の一つで、内視鏡の先端から特殊な器具を出して病変周囲の粘膜を全周にわたり切開し、病変を表層部からはがし取るという方法です。EMR で切除困難な大型病変や技術的に難しい病変であっても高率に一括切除することが可能です。病変を一括切除すると精密な病理診断に基づく正確な治癒判定が可能で、治癒と判断されると一度で治療が完結することが最大の利点です。また、従来の内視鏡治療では治療困難で開腹手術が必要とされる方の一部では、ESDによる内視鏡治療で開腹手術を回避できることも大きな利点です。

先進医療から保険適応に

胃癌や食道癌に対するESDは以前より保険診療の適応となっていましたが、大腸ESDは大腸壁が薄いという解剖学的な理由により高度な内視鏡技術が必要であり、平成23年度時点では保険診療として認可されておらず、厚生労働省が承認した特定の医療機関において先進医療として行う治療となっていました。滋賀病院においても、平成22年より厚生労働省の認可を受けた医療機関として大腸ESDを実施していました。 平成24年度診療報酬改定により大腸ESDは保険診療の適応となり、患者さんの自己負担額も先進医療に比べ軽減されました。先進医療としての大腸ESDと同様に、滋賀病院では保険診療として実施いたします。